システム開発やWEB開発などにおいては作業を中国やベトナムなどの海外エンジニアに任せてしまうオフショア開発が盛んに行われています。オフショア開発のメリットは人件費を大幅にコストダウンできることですが、海外と日本との時差や言葉の問題などが出てくるのはもちろんのことです。
そういった問題を解決するためにはクラウドデータベースを利用するのがいちばんです。ここではクラウドデータベースとは一体どんなものなのか、システム開発においてクラウドデータベースを利用することのメリットなどについて詳しく見ていきましょう。
クラウドデータベースとは
いうまでもないことですが、クラウドデータベースは「クラウド」と「データベース」の2つの言葉から成っています。クラウド(crowd-雲)というのはITの世界ではユーザーがある種のサービスを必要なときに必要なだけ利用するということです。クラウドには実体がなく、ユーザーはサーバーやストレージを持っていなくてもこのクラウドを好きなだけ利用することができます。誰でも使っているフリーメールなどはこのクラウドサービスの代表的なものです。
「クラウドコンピューティング」という言葉は1997年に提唱され始めましたが、当時は定着しませんでした。それが2006年になり、エリック・シュミットがクラウドコンピューティングと新たに提唱したことから急速にクラウドという言葉が定着していったのです。もともと物理的な実体のないインターネットを言葉で表現するには実にぴったりの言葉です。
一方の「データベース(database)」は検索ができるようになっている情報の集まりという意味で、DBと略されることも多くなっています。データベースというと普通はコンピュータで管理された情報を思い浮かべる人が多いと思いますが、図書館の手書きされた蔵書目録カードなどもデータベースの一種です。
ということで、このふたつの言葉を合わせたクラウドデータベースはクラウド上で管理されている情報の集積ということになります。このクラウドデータベースを利用するということは、自社にわざわざ環境を構築しなくて済む、ということです。
クラウドのメリット
さて、オフショア開発というのは日本にある本社から遠く離れた海外の国で仕事が行われることです。このため、クラウドを使わないと作業がかなり滞ってしまうことになります。その点、クラウドを利用していれば世界中どの場所からでも時差なくデータを一所に閲覧したり、検討したりすることができるわけです。要するにインターネットがある環境でさえあれば、どこからでも同じ条件でデータにアクセスできるのがクラウドの大きなメリットになります。
このクラウドにはいくつかの種類があり、それぞれに用途が違います。SaaS(サース-Software as a Service)というのはソフトウェアを提供するサービスのことで、Gmailなどがこれに当たります。ひところまでのOutlookでは自分のパソコンにOutlookのソフトウェアをインストールしなければなりませんでしたが、SaaSではどのパソコンからでもソフトウェアなしにメールを閲覧することができます。このSaaSに対して開発環境を提供するのがPaaS(パース-Platform as a Service)、サーバーを提供するのがIaaS(イアースーInfrastructure as a Service)です。
オフショア開発先として最近注目を浴びているベトナムではクラウドがまだあまり普及していませんので、この辺りからきちんと理解し合っていく手順が大切です。クラウドサービスを利用している企業はベトナムではわずか20%という数値も出ています。
そもそもなぜオフショア開発が必要なのか
ソフトウェアやWEBシステムの開発はおいそれと誰もができるわけではありません。ソフトウェア開発というのはチームで作業しても数ヶ月かかるものです。これをすべて正社員だけで対応すると給与や保険料その他で大きな金額になってしまいます。そこで外注、つまりアウトソーシングの必要が出てくるわけです。
例えばA社がソフトウェア開発をしようとした場合、正社員6人でこの作業を行うとします。各社員の給与が60万円、開発に3ヶ月かかるとすると60万円×6人×3ヶ月=10,800,000円かかる事になります。ここでコストをダウンするためには正社員6名の代わりに正社員1名、あとは下請けの会社に仕事を依頼すると、下請け会社の一人あたりの給与が半分の30万円として、30万円×5人×3ヶ月+60万円×1人×3ヶ月=6,300,000円となります。10,800,000円-6,300,000円=4,500,000円のコストを節約できることになります。
ところが日本国内では格安でしかも優秀なエンジニアが慢性的に不足している状態ですので、日本と比較して物価の安い国に外注する、つまりオフショアリングすることでコストダウンができるというわけです。
この海外にオフショア開発を依頼する場合には、やはりクラウドデータベースを利用することで作業期間を短縮することができます。ITの世界というのは時間との戦い的な要素が強く、一刻も早く開発を済ませればそれだけ利益も上がるものですから、クラウドデータベースを活用してオフショアリングでも無駄な時間がかからないようにすることが重要なポイントです。
オンプレミスとクラウドデータベースの違い
データベースというのは会社の重要な情報をすべて保管しておくところですから、外部に漏れてしまっては困るわけです。こういう理由から日本の多くの企業では長い間、「オンプレミス・データベース」が使われてきました。オンプレミス(on-premises)というのは自社で独自のデータベースを構築し、運営していく方法です。
ところがオンプレミスの場合、プロジェクトごとに開発先の国で開発環境をいちいち構築しなければなりません。このためには約1週間の準備期間を取るのが普通でした。オンプレミスでは最初にデータベースをインストールし、その後にチューニングを行って最高のパフォーマンス成果が上がるようにしなければなりません。
一方、 クラウドデータベースの場合には、データベース環境構築に要する準備期間を数十分にまで短縮することが可能です。ですから、一刻をも争うソフトウェア開発ではクラウドデータベースのほうが圧倒的に有利ということになります。
機密の点からいっても、クラウドサービスの環境が整備されてきた現在、情報が他に漏れるといったような問題はほとんど起こらなくなってきました。しかもバックアップという点では、自分で行わなくても自動的にやってくれますから、むしろオンプレミスよりも安心といえば安心です。
さらにオンプレミスでデータベースを構築すると数千万円かかることもありましたが、これに比べればクラウドデータベースは格安で利用することができます。しかも毎月定額さえ払っていればオンプレミスに要する膨大なメンテナンスや労力も一切必要ありません。
クラウドデータベースの料金は非常に細かく設定されており、あまり使用しない月は請求額も少なくなりますから、オフショア開発で使ったり使わなかったりが多い場合にも無駄がありません。ちなみに月額は9,500~32,000円程度で、これにGBごとの料金が加算されます。
以上のようにクラウドデータベースにはさまざまなメリットがあります。特に海外に業務を委託するオフショア開発ではそのメリットをより強く感じることができるはずです。
とはいえ、クラウドデータベースといっても完璧な存在なわけではありません。クラウドといっても実体が全く無いわけではなく物理サーバーが存在しますし、時間制の料金体系を設けているところでは長時間使うとかなりの割高になることもあります。
ですからクラウドデータベースを選ぶ際には使用状況に見合った料金体系を設定している会社を選ぶことが大切です。