オフショア開発とは、情報システムやソフトウェア、Webシステムなどのシステム開発や、android向けアプリケーション開発などを、海外の企業や現地法人などに委託することです。オフシェアには、岸(shore)から離れる(off)という意味があり、岸から離れて海に流れる風、陸風を意味する言葉です。そこから転じて、岸から離れた沖合や、海外のことを指すようになりました。
近年、Android向けアプリケーション開発でオフショア開発が注目されるようになってきましたが、そのメリットやデメリットを含めて、オフショア開発がおすすめの理由について、詳しく解説していきます。
オフショア開発が注目されている理由
もともとは、欧米の企業が、上昇する開発コストを抑えるために、人材コストの安いインドに進出したのが、オフショア開発の始まりといわれています。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査では、日本のオフショア開発導入率は約45.6%といわれており、注目されていることがわかります。これだけ注目されるのには日本独自の理由があります。
日本ではIT人材不足が深刻
現代の企業にとって、ITの活用は最重要事項のひとつなので、そのためのソフトウェア導入やホームページの作成、アプリケーションの開発なども必須となっており、新たにコストがかかってきています。オフショア開発なら、そのコストが抑えられるほか、人材の確保が容易になるという点でも注目を集めています。日本でのITのニーズが多様化していることもあって、エンジニア不足が深刻となっています。2030年には40万人以上不足するともいわれており、企業が優秀な人材を国内で確保するのが困難な状況にあるのです。
企業の海外進出とダイバーシティという考え方
従来、企業の海外進出は、大規模なプロジェクトであり、そのための投資も莫大なものとなっていました。そのため、海外進出は大企業でなければ困難な部分もあったのですが、インターネットが普及したことにより、中小企業でも海外に進出しやすい環境になりました。このため、企業の海外進出はますます加速しており、海外拠点へのシステム導入とともに、オフショア開発がますます注目されるようになってきているのです。
また、企業の海外進出に伴い、多様な人材を確保する必要にせまられ、人材のダイバーシティという考え方も浸透するようになってきました。こうした観点からも、オフショア開発は注目を集めているのです。
オフショア開発のメリット
コスト削減
そもそもオフショア開発は、コスト削減を目的に始まったものなので、やはりコストを抑えることができるというメリットは大きいです。
日本国内よりも人件費が安い海外の開発会社に委託することで、大幅なコストダウンが見込めます。
優秀な人材を確保できる
日本国内でのシステムエンジニアの人材不足は深刻で、どんなに待遇をよくしてもなかなか確保できないのが現状です。一方海外では、官民合同でIT教育をおこなっていたり、エンジニアのスキルによって給与水準が明らかに上昇したりするという環境の国(ベトナム)もあります。
そのため、本人の能力や努力次第で、短期間で給料が大幅に上がることも可能で、それだけモチベーションが高くなり、優秀な人材が育つ下地があるのです。そして、日本国内の物価では、安い人件費でも、現地では高給になるので、優秀な人材も集まりやすいのです。
ラボ型開発がしやすい
ラボ型開発とは、エンジニアの確保のために、通常半年から年単位の期間で、仕事量を最低保証して契約する方法のことです。コスト削減のためには案件ごとに必要なだけのエンジニアを集めるほうが安価で、通常は案件が終わると契約終了ということになります。しかしそれだと、せっかく集まった優秀な人材が、次に案件が発生したときに、別の企業の仕事をしていることもありえます。ラボ型開発なら、そういったことが起こらず、常に優秀な人材を確保し続けることができます。通常の契約よりは人件費が高くなるのですが、オフショア開発なら、もともとの人件費が安いので、ラボ型開発も可能となるのです。
オフショア開発のデメリット
物理的な距離や時差の違い
当然のことですが、日本国内でエンジニアを確保するのなら、物理的な距離も近く、時差もありません。オフショア開発だと、物理的に距離が遠くなり、時差もあります。円滑なコミュニケーションをとるのが困難なのです。
それをそのまま放置してしまえば、打ち合わせ不足や進捗状況の管理不足になり、それが結果にも悪影響を及ぼしてしまいます。
しかし、そのことも考慮に入れた上で、時間を決めてWeb会議をするなど、こまめにコミュニケーションをとる工夫をすれば、それは克服できるでしょう。
文化や価値観の違い
海外の文化は、日本の文化とは違います。インドネシアなどイスラム教徒の多い国では、祈りの時間に電話をしたり、会議の時間を設定したりすると、信仰を侮辱したととらえられることがあります。また、祝日も日本と海外では違いがあるので、オフショア開発の拠点国のカレンダーをよく理解した上で納期を決めていかないと、トラブルが起こる可能性があります。ほかにも、日本人は勤勉な国民性なので、納期に間に合うように残業をすることに抵抗のない人が多いですが、海外にまでそれを押し付けることは難しいです。交通機関が発達していないために残業すると家に帰れなくなってしまう地域や、そもそも残業という概念のない地域もあります。
これらの文化や価値観の違いをよく理解し、それを尊重した上で、納期や進捗管理をおこなっていかなければなりません。
言葉の壁
海外とのコミュニケーションをとる上で、やはり一番のネックは言葉の壁です。互いに自国語しか使えないと、コミュニケーションをとるのは難しくなってしまいます。ただ、他の分野に比べると、ITは、システム開発に使うプログラミング言語が世界共通という利点はあります。使う言葉が違っても、プログラミング言語を通して、意思疎通することはできるでしょう。
オフショア開発先でおすすめの国
中国
中国の人口は12億人を越えているので、エンジニアの人数が圧倒的に多いです。また、国土が広いにもかかわらず、IT企業は沿岸都市に多くあるので、日本との時差も少なく仕事を進めやすいです。
インド
IT大国のインドは、優秀なエンジニアが多く、世界的なIT企業のCEOにもインド人が多いです。
そして、インド人は英語を話せることから、欧米の企業がオフショア開発をおこなってきた長い歴史もあります。
ベトナム
インドや中国と比べると人件費が安く、新日家が多く、真面目な国民性のため、最近特に注目されています。
そして、国をあげてIT教育に力を入れていこともあり、優秀な人材も多いです。
インドネシア
英語での会話が可能なので、近年人気が高まっています。日系企業の進出も進んでいることもあって、オフショア開発拠点にしやすいといえます。
オフショア開発は、Android向けアプリケーションの開発やシステム開発などを、海外の開発企業に委託することで、エンジニア不足が深刻な日本では、近年注目を集めています。中国やインド、ベトナムやインドネシアなどが、オフショア開発先として人気のようです。オフショア開発には、大幅なコスト削減が見込めるほか、優秀な人材を集めやすいというメリットもありますが、言葉の壁や、文化や価値観の違いなどのデメリットもあります。しかし、宗教や文化の違いをきちんと理解した上で尊重し、コミュニケーションを密にとる工夫をしたら、デメリットも克服することは可能です。