本当に効率的?【オフショア開発】で多くの企業が苦戦するワケ

1990年代より世界経済のグローバル化によって、生産プロセスや生産以外の業務を海外に委託するオフショア開発が日本だけではなく、欧米諸国の間でも広がっています。業種も製造業からIT産業・BOPなど多種多様で、アメリカでは行政業務もオフショアしている自治体があると言います。
日本企業も少子高齢化による人手不足を解消するために、年々オフショアを活用する企業が増え、中には生産基盤のすべてを海外へ持っていき生産・組み立てを行うようになった企業も出現し、日本の現状を考えると将来的にも増えて行くだろうと予想されています。
そこで今回はオフショア製品の生産・組み立ては効率的なのか?ということを考えてみたいと思います。

オフショアの現在

オフショアとは企業が業務の一部もしくはすべてを海外に委託することを言います。
似た言葉としてアウトソーシングがありますが、こちらは国内外問わず業務を外部に委託することを指します。
オフショアは主にコスト削減を目的として人件費の安い、発展途上国に業務を委託して利益を得ることが目的でした。また少子高齢化の進む日本では国内での人員確保が難しく、人手不足解消という意味においてもオフショアが人気のある理由の一つです。
特に製造業では日本国内の法規制で新たな工場の建設が困難になり、たとえ建設できたとしても高額な設備投資する必要があることから、製造・生産領域などの比較的単純作業を発展途上国に現地法人を設立して工場を建設して稼働していました。その業種は半導体産業やパソコンやスマートフォンなどの電子産業・自動車業界など多種多様にわたります。
近年ではオフショア開発国の人たちの知識や能力の向上で、Webシステム開発やコールセンターやBOPなどの専門的な分野でもオフショアを行う日本企業が出てきています。
オフショアの最大のメリットはコスト削減と人員の確保ですが、オフショアを活用して成功している企業はほんの一握りで、多くの企業が苦戦している状態です。苦戦している理由は企業によってさまざまですが例を挙げてみると、
・仕様書に対する理解度のギャップ
多くの仕様書は日本語で書かれているものを現地で翻訳して使われているので、その翻訳のレベルによっては間違って翻訳されて、まったく違ったものが出来てしまうというトラブルが後を絶ちません。
・品質に対する意識のギャップ
日本では品質に対しては100%を求めますが、海外では必ずしもそうではありません。
そういった意識の違いが問題になってきます。
・リスク管理の失敗
海外での事業では日本では考えられないトラブルが起こりうる可能性があります。
日本で事業を行っているよりも細心の注意をしなければなりません。
・国内産業の空洞化と技術の流出
海外に業務を移行するとその分日本国内の雇用が失われてしまいます。
そして大切な日本企業の技術やノウハウの流出も深刻な問題になっていて機密事項の保持や知的保有権の保護の体制を整える必要があります。

Made in japan とは?

私たち消費者が何かを購入する時に重要視する項目として価格・性能が挙げられますが、その他にも原産地表示を重要視する人が多いようです。
たとえば同じ価格と性能であった場合一つは日本製、もう一つは外国製であったならば多くの人が日本製を選ぶのではないでしょうか。
それだけMade in japan製品は信頼性があり、消費者にとっても安心感があります。日本国内で製造して海外へ輸出する場合は「Made in japan」として自信を持って輸出できますが、オフショアの普及によって原産地表示の信ぴょう性は非常にあいまいになってきています。
コスト削減のために日本企業が企画や設計は日本国内で行い、製造や組み立ては海外に工場を設立して生産し、出来た製品をMade in japanとして売り出すこともありますが、しかしそれは日本製ではなく外国製になります。
Made in japanとして完全に認められるものは、日本企業が日本国内で製造したものと外国企業が日本国内で製造したもので、それ以外のものは完全な日本製とは言えません。しかし外国企業が日本国内で製造した物も日本製になってしまう懸念があります。
そのために最近では、日本企業が海外で生産を行った製品に「Made by japan」と表示をつける企業も出てきました。
それは「Made by japan」の表示を付けることで、日本人が作ったという付加価値を付けることが狙いだと言えるでしょう。

電子化の進展がもたらす物づくりの変化

近年は自動車などの重工業製品にも、多くの機能と高い品質が求められるようになり、それに加えてメカ制御だけではなく電子機器にもソフトウェアを使った細かい制御が必要になってきました。
そのため製造業においてもソフトウェアの開発業務量の増加は避けられない状態になっています。現在の製造業における深刻な人材不足によって、人材を求めてオフショア開発を行う企業が増えてきましたが、それでは日本は経済成長をすることができません。
人材不足の中、日本国内で生産性を上げるには高度なファクトリーオートメーションすなわちスマート工場の実現が重要になってきます。
スマート工場とは工場内のオートメーションを高度に進めて工場内設備・システム・センサーをインターネットに繋げて総合的に管理して生産性向上性を高めていくという考えで、第4次産業革命と呼ばれる流れの中での取り組みです。
スマート工場が実現すれば情報伝達・生産性や品質の向上に変革をもたらしてくれる可能性が高く、日本国内での現場力を上げることができます。
こういった背景でシステム開発の需要が急増して、国内のエンジニア不足から製造業においても製造工程だけではなく、システム面でもオフショア開発がおこなわれるようになったのです。

オフショア製品の生産・組み立ては効率的なのか?

日本の深刻な少子高齢化によって将来的に今のままでは人材不足なることは必然的です。
現時点でも製造業やエンジニアでは慢性的な人手不足に悩まされていて、その解決策としてオフショア開発が行われるようになりました。
かつてのオフショアと言えば上流工程は日本国内の企業が行い、製造工程をオフショア開発国に依頼していましたが、これからは上流工程から生産・組み立てまで一貫してオフショアをする企業が増えて来るだろうと予想されます。
その背景には日本国内の人手不足はもちろんのこと、オフショア開発を受ける人たちに優秀な人材が増えてきたからだと言えます。
上流工程から製造工程までを一貫してオフショアすれば効率的で開発経費削減にもなりトータル的にはコストダウンに繋がりますが、その反面リスクも高くなり、リスクに対しての対応も迫られます。
オフショアを成功させるには現地の人たちと積極的にコミュニケーションを取ることです。
テレビ会議はもちろんのこと、案件が重要な局面になっている時には頻繁に現地を訪れて対面で話し合い、すべてを現地に丸投げせずに進捗状況や品質をしっかりと目で確認することが大切です。オフショア開発で失敗しているケースの大部分はしっかりとコミュニケーションを取ることで、トラブルが解決するケースが多いようです。現地とのコミュニケーションを積極的に取ることがオフショアを円滑に進めるポイントであり、リスク回避にも繋がります。

企業がオフショア開発を行う狙いはコスト削減と優秀な人材の確保です。
しかしながら、コミュニケーション不足やプロジェクトマネジメント不足の行き違いから、開発期間が長期化して結局コストがかかってしまうというケースが後を絶ちません。上流工程から製造工程まで一貫してオフショアを行うと、仕様書がわからなくて作業が滞ってしまうことを未然に防ぐことができます。また現地のエンジニアが主体的に仕事に取り組めるような仕組みを作ることが、スキル向上にもなり、その結果品質の向上に繋がっていくと言えます。

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