ソフトウェアやアプリケーション開発業務を海外にアウトソーシングする「オフショア開発」を導入する企業が年々増加しています。日本国内で開発を手がけようとすると、ITエンジニアの確保が困難な上、高い人件費を支払わなければなりません。一方、オフショア開発では、安価で優秀な人材を安定して確保し、設計からテスト工程まで一貫して委託することが可能です。こうしたメリットから、オフショア開発を活用する企業が増加したと考えられ、すでに国内のIT企業の半数近くが導入しているという報告があります。
そこで今回はオフショア開発の魅力にせまるとともに、導入を成功させるポイントなどについてご紹介します。
オフショア開発が注目される理由
日本のIT企業がオフショア開発を活用する一番の理由は、開発コストの削減です。また、コストカットにより利益を増やす狙いもあります。開発コストの大部分は人件費が占めています。日本のITエンジニアを起用した場合と比べ、オフショア開発を利用すると人件費が3分の1から4分の1程度に抑えられるケースがあり、その結果トータルコストを大幅に削減し、利益の拡大が可能になるのです。
また、近年では国内で慢性的に不足しているIT人材に代わる優秀なリソースを確保する、開発拠点を持つなどといった目的でオフショア開発を導入する傾向にあります。海外のITエンジニアの人件費は単価が安いものの、スキルや技術力は日本のエンジニアにひけをとりません。開発期間、工数、クオリティが同等だった場合、国内で開発するよりもオフショア開発の方がコストメリットは大きくなります。さらに、オフショア開発では、プロジェクト期間中、優秀な人材を必要な数だけ確保することが可能です。したがって、人材不足に悩む心配がありません。
オフショア開発では、システム設計からテスト業務までを一手に委託できるのも大きなメリットです。その上、開発委託先に運用やメンテナンス業務をアウトソーシングできるため、業務毎に異なる委託先を探す必要がありません。ソフトウェアやアプリケーション開発および付随する業務を同じところに委託できれば安心できる上、トータルコストの削減にもつながります。
こうしたことから、今後もますますオフショア開発を活用する企業が増加するでしょう。
オフショア開発の魅力とは?
オフショア開発の最大の魅力は、開発にかかる人件費を大幅に削減できることです。国によって差はあるものの、ITエンジニアの単価が低いところでは、日本の3分の1から4分の1程度で済むのです。また、安価でありながら日本のITエンジニアと同等の技術力があり、設計からテストまで一貫してアウトソーシングすることで費用対効果も高まります。
さらに、オフショア開発では、海外に企業専属の開発チームをつくり、長期的なプロジェクトの運用や定期的な委託も可能です。海外で自社専属の開発チームをつくり、優秀な人材を長期間確保するには「ラボ契約」が有効です。ラボ契約は、ラボ型開発やオフショア開発センター(ODC)などと呼ばれることもあります。半年や1年などの契約期間が定められ、その期間中は常に必要なITエンジニアを確保し、いつでも業務を発注することが可能です。こうした開発チームを持つことで、エンジニアたちの間で開発ノウハウが自然と蓄積され、さまざまなプロジェクトに柔軟に対応できるスキルが身につくと期待できます。プロジェクト毎に契約を締結し直す必要がない、細かい業務説明を省けるようになるなど、時間や手間コストを削減できる点もメリットが大きといえるでしょう。
加えて、ラボ契約ではシステムの運用や保守などの業務も開発チームに委託することが可能です。設計、開発およびテストの工程にたずさわり、仕様を理解しているエンジニアが運用・保守を行うことで、業務を効率良く行えると期待できます。
オフショア開発導入の際の注意点
ソフトウェア設計からテスト工程までを任せられ、開発コストを削減できるオフショア開発は、メリットが大きいと感じるでしょう。一方で、言語や文化の異なる国に開発業務をアウトソーシングすることで生じるデメリットを理解しておく必要があります。オフショア開発で1番課題となるのは、言語の違いにより、十分にコミュニケーションがとれない、意図が伝わらないなどではないでしょうか。自社に現地の言葉を話せる人間がいない、通訳を雇うことでコスト増になるなどといった場合は、日本企業の開発業務の実績が豊富であったり、日本語対応が可能な委託先を選定するとよいでしょう。
また、海外の委託先は物理的な距離が遠いため、現地を頻繁に訪れることが難しくなります。遠方であるほど交通費や宿泊費などの出張コストもかさむため、直接会って、度々綿密な打ち合わせをするというわけにはいきません。しかし、こうした問題はWeb会議システムを利用することで解消できるでしょう。Web会議システムでは映像や音声のやりとりができるため、モニターなどで現地のエンジニアたちの顔を見ながら、リアルタイムで会話することが可能です。
ただし、日本と委託先の国の間には時差が生じます。国によっては、日本と昼夜が逆転しているところもあります。さらに、国民の祝日なども異なるため、Web会議や電話などでやりとりする場合は、日にちや時間帯に気を配らなければなりません。したがって、委託先のエンジニアと密にコミュニケーションをとりたいのであれば、日本との時差が少ない企業を選ぶのが理想といえます。
オフショア開発を成功させるには?
オフショア開発の委託先として人気にある国は、中国、ベトナム、インド、フィリピンなどです。中でも、近年はベトナムがオフショア開発先として注目されています。その理由として、中国やインドなどよりも人件費が安い、勤勉な国民性や親日国であるなどといったことがあげられます。また、日本との時差が少なく、その差はたったの2時間であるため、業務時間中の打ち合わせや連絡が十分可能です。しかし、やはり問題になるのは言語の壁でしょう。現にオフショア開発に失敗した企業の多くは、その原因を言語の違いによるコミュニケーション不足としています。それでは、オフショア開発を成功させるためには、どうしたらよいのでしょうか。その鍵をにぎるのは、「ブリッジSE」と呼ばれるエンジニアの存在です。
ブリッジSEは日本の企業と海外の委託先の架け橋となる、いわばコミュニケーターをいいます。コミュニケーターといっても、本業はエンジニアであるため、ITの知識や技術力を備えているのはもちろんのこと、委託側・受託側それぞれの国の言語、文化、ビジネスなどに精通していることが求められます。ブリッジSEが間に入ることで両者のコミュニケーションがスムーズになり、設計からテストまで、開発にかかわる業務が効率良く進められると期待できるのです。したがって、ブリッジSEはプロジェクトマネージャーの役割も担っているといえます。さらに、業務効率が上がることで納期の厳守や短縮の実現、仕事のクオリティを高めるといったことも可能になるでしょう。
ソフトウェア設計からテストにいたるまでの工程を一貫して委託できるオフショア開発は、コスト面から見てもメリットが大きく、非常に魅力があるといえます。その反面、言語や文化の異なる国のエンジニアたちとの意思疎通がはかれないと、海外にアウトソーシングするメリットが活かせず、かえってコスト増になるなど、失敗に終わるケースもあります。このような事態を防ぐには、優秀なブリッジSEの採用が重要なポイントです。ブリッジSEが委託側・受託側の橋渡しをすることで、両者の円滑なコミュニケーションが可能となり、業務の効率化やさらなるコストカットが実現できるでしょう。