近年になって、ソフトウェア開発の全体、あるいはその一部を海外の企業に委託するオフショア開発が盛んとなってきました。
このオフショア開発の最大のメリットは、海外の人件費の安さを最大利用する点です。対して外国人労働者を国内に招請してソフトウェア開発を行うことをオンショア開発と呼んでいます。
この記事では、オフショア開発とオンショア開発の単価相場について解説していきます!オフショア開発とオンショア開発で迷っている方や、それぞれの単価相場が知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
オフショア開発の単価相場は?
オフショア開発の単価相場は国やエンジニアの技術力によっても異なるので一言で言い表すことはできません。下記に国ごとのエンジニアの単価相場を記載していますが、こちらはあくまでも参考程度にしてください。
国 | エンジニア単価相場 |
中国 | 35万円~40万円 |
インド | 30~40万円 |
ベトナム | 33万円前後 |
フィリピン | 25~30万円 |
タイ | 32万円~37万円 |
インドネシア | 32万円前後 |
ミャンマー | 18~20万円 |
数年前のオフショア開発では、中国やインドといった現在ではIT大国となっている国にオフショア開発の依頼を行うのが主流でした。
依然として、規模の面では中国がもっとも大きな市場となっていますが、ここ数年の傾向としては、人件費の安さから東南アジア各国にオフショア開発の依頼をするケースが増えています。中でも新規オフショア開発案件の8割はベトナムに委託しているという調査結果もあります。他にはフィリピンやタイ、インドネシアも伸びてきているようです。
東南アジアが人気の理由3つ
これらの国がオフショア開発の委託先として人気な理由は3つあります。
- 賃金が安いこと
- 技術力が日本のエンジニアに劣らないこと
- 日本から近いこと
賃金が安い
(図1)
上記の図は、平成29年度に経済産業省が出したIT関連産業の給与等に関する実態調査結果から引用しているものです。これを見ると、ベトナムのIT人材の賃金は日本の約1/4~1/3であることがわかります。
対して以前はオフショア開発の委託先として主流だった中国やインドの人件費は、現在では日本の人件費とたいして差はないほどにまで高騰していることがわかります。
技術力が日本のエンジニアに劣らない
(図2)
近年東南アジアでは、政府がIT人材の育成を推進しています。毎年のようにIT系の専門学校が設立され、優秀な技術者が育成されているのです。図2からもわかるように、それらの技術者は、日本人エンジニアの技術力に劣ることはなく、むしろ日本の技術力を上回っているケースもよくあるのです。
コストが安く、かつ、若くて優秀な人材を確保できるという2点はオフショア開発最大のメリットです。
日本から近い
オフショア開発を成功させるうえで最も大切なことは、積極的にコミュニケーションをとることです。そのためには、日本と距離が近いということがとても重要になってきます。
Skypeなどの遠隔操作システムが開発されたことは、オフショア開発に大きな利便性をもたらしましたが、だからといって委託先に開発案件を丸投げしてしまっては、その案件は必ずと言っていいほど失敗してしまいます。
そのため、日本から現地に足を運べる距離にあり、時差も少ない東南アジアはオフショア開発の委託先としてメリットが大きいのです。
以上の3点から、東南アジアでのオフショア開発が近年の主流であることがわかります。
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単価だけでは図れないケース
東南アジアのIT人材における単価の魅力について解説しましたが、オフショア開発の案件は単価だけでは図れないケースも多々あります。
大型案件で技術を要する場合
中国とインドの二つの国はIT大国として君臨しています。そのため、技術者の単価は上がってきており、日本企業がオフショア開発を考えるときに単価の高さに二の足を踏んでしまうケースがあります。
しかし、だからといって中国やインドにオフショア開発の依頼をしないのかというと、必ずしもそうではないのです。というのも、大型案件で開発技術やノウハウを要する案件の場合は、中国やインドのほうがトータル的に開発費用が安く抑えられるケースもあるからです。
その理由として、中国やインドのオフショア開発の老舗国は、豊富なノウハウがあることがあげられます。ベトナムでしたら月あたり80人規模の人員がかかるところを、中国だと40人規模で開発ができたりすることもあるのです。
大型プロジェクトの開発実績があり、業務システムや基幹系システムの開発実績が豊富なオフショア開発企業でしたら、その分工数がかからないのは当然のことなのです。
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オフショア開発のコストが意外とかかる話
オフショア開発のコストを計算する際に、エンジニアの単価にばかり目をとられていませんか?
実は、オフショア開発ではそれ以外にも様々なコストが発生します。どんなコストがかかるのかご紹介します。
コミュニケーションコスト
オフショア開発では、言語や文化が違う人たちとの意思疎通が大きな壁になります。そのため、ブリッジエンジニアと呼ばれる日本企業とオフショア企業のコミュニケーションの架け橋となる人物を開発チームに入れることがほとんどです。このようなエンジニアは、通常のエンジニアよりも単価が高くなるのであらかじめ見積に入れておきましょう。
エンジニアの採用費
オフショア開発では、様々なエンジニアの採用方法があります。日系のオフショア企業に人材を紹介してもらったり、現地のwebサイトで人材募集をかけたり、知人に紹介してもらったりと会社さんによって異なる採用フォームを活用しています。どのような方法で人材募集をするのか、コストはいくらかかるのか、社内でも話し合っておきましょう。
オフィスの賃料、光熱費
「海外に開発拠点を作りたい」という会社さんは、オフィスの賃料や光熱費がかかります。同じ国でも、首都とその他の地域によって物価が大きく異なるので、どこの地域でオフショア開発するのか、地域ごとのインフラ整備は心配か、などの下調べが必要になります。
渡航費、宿泊費
近年はSkypeなどの遠隔会議システムが発達し、現地に常駐するコスト負担は減りましたが、それでもやはり現地の開発現場に足を運ぶことは重要です。互いの信頼関係を深め、スムーズなオフショア開発を実現するためにも、1か月に1度くらいは現地に行くイメージでコストを計算しておきましょう。
オンショア開発ってなに?
オンショア開発とは?
オフショア開発に対してオンショア開発という言葉があります。オンショア開発というのは、自社に海外のエンジニアを招請してソフトウェア開発をしてもらうというものです。
これにはいろいろなケースがあります。例えば海外からの実習生を大学や企業が受け入れて実習を行い、そのまま日本で働いてもらうケースです。
もちろんIT開発がメインとなります。他には、海外の人材派遣会社の斡旋を受けて国内企業に迎え入れる方法です。他には委託しているオフショア開発会社からエンジニアを受け入れる方法もあります。
オンショア開発の単価は?
ここで気になるのは、単価相場です。
オンショア開発の場合は、日本での採用になりますので、オフショア開発よりも単価は高くなります。しかしながら、日本でのIT人材が圧倒的に不足していることを踏まえると、海外のIT人材を国内に招請するオンショア開発は十分に利用する価値があるのです。
IT企業の開発体制は、今後どう変わる?
現在多くのIT企業では、オフショア開発会社に案件を丸投げということはなく、国内の企業と連携しながら開発案件を進めているケースが多くなっています。
国内企業からも何人もの開発エンジニアがオフショア開発会社に派遣されますし、もちろん国内でも開発体制やデバッグ体制が構築されています。また逆もしかりで、オフショア開発会社から、国内企業の発注元にエンジニアが派遣されるケースも現在では常識となっています。
オフショア開発といっても、開発案件をすべて任すといった丸投げにはならず、オフショア開発会社と発注元でもある国内企業の間で人員の往来が頻繁に行われます。それはまるでひとつの企業であるかのようにも見えることでしょう。
この開発体系のメリットは、海外エンジニアの日本語と日本文化に対する理解に始まり、日本型経営や開発体制の理解につながり、そのノウハウがこれからの国内でのIT人材不足に歯止めをかける一つの手段となりえるのです。
おわりに
オフショア開発とオンショア開発の単価について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
- オフショア開発は東南アジアが人気
- 東南アジアのIT人材にかかるコストは日本の1/4~1/3
- 海外エンジニアの技術力は日本のエンジニアに劣らない
- 大型の開発案件は中国やインドの方がコストカットできるケースもある
- オフショア開発とオンショア開発を融合した体形がIT企業の主流
日本の政策として外国人労働者を広く求める施策も検討から実施の段階に入ったようです。これからのソフトウェア開発の環境はこれまでとはかなり違った環境に変化していくことでしょう。