オフショア開発とは、ソフトウェア開発をはじめ、Webシステムやスマホアプリなどの開発を海外で行うことで開発コストを下げるビジネスモデルのことを指します。もともとは欧米諸国がコストダウンのためにインドへ進出したことから始まったといわれていますが、日本では中国をはじめフィリピンやベトナムなどに進出しています。
今回はこのオフショア開発の中でも、少し前までいわれていたオフショア開発=工場の意味や最近のパターンである海外BPOの形式にどのようなものがあるかをご紹介していきます。
オフショア開発=工場といわれていたのはなぜ?
オフショア開発=工場という言葉だけを聞くと工場のような広い部署に多くのエンジニアを集めて、ただひたすらにソフトウェア開発を行う、というイメージを持つ人も少なくないことでしょう。
しかしここでいうオフショア開発=工場という言葉は中国でのオフショア開発における成功例に工場で商品を作る製造業が多いことが挙げられます。製造業におけるITというと生産や在庫の管理システムなどがありますが、もともと中国では工場で製品を作るということが多く、日本企業が新しく中国で工場を導入する場合、現地にある企業や工場に委託する形でオフショア開発を行っているケースが多いです。
日本からのオフショア開発でこのような工場での事例が成功例として多かった理由として、ひとつの工場ではなく複数の工場を活用させる事例が多く、安い労働力を大量に確保できることに加えて、作業自体も複雑なものではなく、比較的単純なものであることが多いというものがあります。
これが意味するところとしては、オフショア開発という形で依頼したソフトウェアなどを日本ではなく現地で使うことや、中国でオフショア開発をするにあたり人材育成における日本語教育や技術指導などを、他に中国に進出した国と比べて強く行ってきたという背景も欠かせません。
しかしこういった工場の進出やオフショア開発などによる技術流出が結果として中国経済の発展へとつながり、人件費や家賃などが上がってしまったために失敗し、撤退を余儀なくされてしまった例も多く、現在ではオフショア開発の拠点は中国から東南アジアへと移行しているのが現状です。
オフショア開発の新しい形のBPOってなに?
BPOという言葉を聞いたことがあるでしょうか。ビジネス・プロセス・アウトソーシングの頭文字をとった言葉です。「アウトソーシング」というと人材派遣サービスなどと同じようなものと考える人もいますが、BPOではそれだけではなく、システムの管理や構築、データ入力などの多岐にわたる業務を社外に委託することで作業を進めていくスタイルのことを指す言葉です。
ソフトウェアの開発などを海外に委託し、コストダウンを考えるオフショア開発と違い、データ入力やテキストへの日本語での入力作業などを海外BPOという形で委託するのは、セキュリティ面はもちろんのことながら、日本語でのコミュニケーションがとりづらいという点からも大丈夫なのか不安になる人も少なくないことでしょう。
しかしオフショア開発の需要が東南アジアで高まっていることや、ベトナムなどを中心に日本語を勉強する人が増えていることもあり、日本語の知識を持つ人もオフショア開発を委託される企業には多く、それに伴ってBPOの作業もできるようになっているとも言えます。
またこのようなBPOが海外に委託できるという利点を生かし、ソフトウェア開発などを中心としたオフショア開発から、データ入力や経費計算、さらにはエクセルを使用した業務など、日本国内では総務や庶務といった業務内容もBPOとして海外に委託し、コストダウンに踏み切ったり、それらの業務を減らすことで今までは対応が難しかった業務へのサポートに回るなどの方向転換をする企業も出てきています。
海外BPOのオフィスワークにはこんなものも!
オフショア開発が最近では海外BPOとして総務などの業務内容も行っていることをご紹介してきましたが、BPOと一口にいってもその業務内容は一般的なオフィスワークだけにとどまらず、海外BPOを行う企業によってさまざまなアイディアがあり、海外BPOで委託されているものの中には意外なものもあります。
ここからはそんなアイディアあふれる意外な海外BPOの業務をご紹介していきましょう。
アニメーション制作
日本国内はもちろんですが世界的にもその知名度は高く、テレビはもちろん映画などでもさまざまなアニメが作られています。実はアニメーション制作も海外にアウトソーシングされているのをご存知でしたか?
このアニメーション制作の海外BPOは東映アニメーションが1986年から行っていて、現在では東映アニメーションで製作されるアニメーションの中でも8割という大部分が海外BPOという形でフィリピンで作られています。
Amazonへの出品業務などのeコマース分野
Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどのeコマース市場は、現代におけるショッピングの中でも高いウェイトを占めるくらいにメジャーなものですが、企業によっては楽天市場には出店していてもAmazonには出店していないなどのケースも少なくありません。新しくAmazonに出店をすることを考えても、情報をコピーしたり、画像を加工したりと手間がかかってしまいがちですが、このような作業を海外BPOで委託するとちゃんとしたマニュアルとトレーニングができれば問題なく行うことができるのでコストダウンにもつなげられます。
海外BPOのメリットはコストダウンだけじゃない?
オフショア開発やそれに伴う新しい形ともいえる海外BPOをするメリットがコストダウンや納期短縮にあるのはわかり切った話ですが、コストダウンばかりを視野に入れていると、言葉や文化の壁はもちろん、拠点を維持するための費用がかさむことなど結果として失敗へとつながってしまうことも少なくありません。
しかし海外BPOを行うことはコストダウン以外にもさまざまなメリットがあり、それらを活かすことができれば目先のコストダウンよりも大きなチャンスが得られることもあります。
そんな海外BPOのメリットとして、まず挙げられるのが優秀な人材を確保できることです。オフショア開発と考えてしまうとプログラマーなどのITエンジニアや、教育が進んでいる場合はブリッジSEを確保できるという部分もありますが、優秀な人材がいる場合はこれらの仕事の効率が上がるだけでなく、日本人では意識しづらい仕事に関する考え方や、市場開拓につながるヒントなどが得られることもあります。
次にデメリットでもありますが、メリットにも変えられるのが「日本語を重視しない」です。いくら海外で業務委託をしているからといって、発注先が日本の企業である以上日本語を重視しないことに疑問を持つ人もいるでしょう。
しかし冷静に考えてみてください。海外BPOのようにグローバルビジネスを行う場合、委託先はもちろん、ビジネス相手でも日本語を話せるスタッフがいなければ、残念ながら日本語でコミュニケーションをとることは不可能です。
しかしこれが英語であればどうでしょうか。海外BPOでの委託先はもちろん、その委託先からつながる多くの企業や人物であっても、英語であればコミュニケーションは自然と取ることができます。
もちろん日本語が悪いわけではありませんが、海外BPOという形でグローバルビジネスを行うのであれば、意図的に日本語の割合を減らしてさらなるビジネスチャンスへとつなげるほうが将来を考えた場合には有利になるといえるでしょう。
いかがでしたでしょうか。今回はオフショア開発の中でもさまざまな形を広げつつある海外BPOについて、どのようなものかや意外とも思える海外BPOの業務内容などについてご紹介してきました。
海外BPOにはコストダウンや納期短縮のほか、市場開拓や新しい考え方の導入などのメリットもありますが、ただ単に人件費が安いからというだけでオフショア開発や海外BPOに乗り出しても、結果として失敗につながることも多いです。
しっかりとしたビジョンや明確な意識を持ってオフショア開発や海外BPOへの展開ができれば、新しいビジネスチャンスもつかめるのではないでしょうか。